「朝起きると指がこわばる」「ペットボトルのふたが開けにくい」「指の関節が腫れて痛い」。40代後半から50代の女性から、こうした相談を受けることが増えました。
多くの方が最初に心配されるのは「リウマチではないか」ということです。実際には、この年代の指の痛みには大きく3つの原因があり、そのうちのひとつが関節リウマチです。残りの2つは、更年期のホルモン変化に伴う関節痛と、ヘバーデン結節に代表される手指の変形性関節症です。
この記事では、リウマチ専門医の立場から、更年期に指の関節が痛くなる理由、リウマチとの見分け方、何科を受診すべきかの目安、そして今日から始められる対処法を解説します。
更年期に指の関節が痛くなるのはなぜ?
結論から言うと、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が、指の関節や腱を包む「滑膜」に影響するためと考えられています。
エストロゲンの減少と「滑膜」
滑膜は、関節や腱のまわりを包み、なめらかに動くための潤滑液を出している薄い膜です。この滑膜には、エストロゲンを受け取る「受容体」が多く存在することが分かっています。
エストロゲンには、血管を広げて血流を保ち、滑膜のしなやかさを維持する働きがあります。閉経前後にエストロゲンが急に減ると、滑膜が腫れやすく、こわばりや痛みを感じやすい状態になります。これが、更年期に「指がこわばる」「関節が痛い」と感じる方が増える理由のひとつです。
「メノポハンド」という考え方
更年期の女性に起こりやすい手指のトラブルは、海外では「メノポーザルハンド」と呼ばれ、日本手外科学会は「メノポハンド」という呼び名で予防と早期受診を呼びかけています。
メノポハンドに含まれる代表的な病気は次の6つです。
- ヘバーデン結節(指の第1関節の変形性関節症)
- ブシャール結節(指の第2関節の変形性関節症)
- 母指CM関節症(親指の付け根の変形性関節症)
- ばね指(腱鞘炎)
- ドケルバン病(手首の親指側の腱鞘炎)
- 手根管症候群(手のしびれ)
ポイントは、これらが「更年期の一時的な不調」で終わらないことがある点です。日本手外科学会は、更年期の手指の痛みを放置すると7〜10年で指の変形に進む可能性があるとして、早めの受診を勧めています。
こんな症状は更年期の関節痛に典型的
- 朝や動かし始めに指がこわばる
- 両手の指に、日によって強さの変わる痛みがある
- ものをつまむ、ふたを開ける、雑巾を絞る動作でつらい
- 腫れははっきりしないのに、指を動かすと痛む
- ほてり、発汗、睡眠の不調など、ほかの更年期症状と時期が重なる
指の関節の痛み、原因は主に3つ
結論:同じ「指の関節が痛い」でも、原因によって経過も治療も異なります。まず3つを区別することが出発点です。
| ①更年期に伴う関節痛 | ②手指の変形性関節症(ヘバーデン結節など) | ③関節リウマチ | |
|---|---|---|---|
| 痛む場所 | 手指全体、手首、膝、肩など | 第1関節(ヘバーデン結節)、第2関節(ブシャール結節)、親指の付け根 | 第2関節・指の付け根・手首が中心。複数の関節に及びやすい |
| 腫れ方 | 腫れることは稀。痛みとこわばりが中心 | 関節の両脇に硬いコブ、赤みや熱感を伴うことも | 関節が腫れることがある(やわらかく熱をもつ)。痛みだけで腫れがはっきりしない時期も多い |
| 経過 | 数年で落ち着くことが多い | ゆっくり進み、変形が残ることがある | 放置すると関節が壊れていく |
| 血液検査 | 異常なし | 異常なし | リウマトイド因子・抗CCP抗体・CRPが陽性になりやすい |
| 主な対応 | 生活の工夫、婦人科での相談 | 安静、テーピング、薬、必要なら手術 | 早期の薬物治療 |
①更年期に伴う関節痛
閉経前後の数年に多く、指だけでなく手首、膝、肩にも症状が出ます。関節が腫れることは稀で、痛みとこわばりが中心です。日によって強さが変わり、ほかの更年期症状と同時期に起こるのが特徴です。関節そのものが壊れていくわけではないため、時間とともに落ち着く方が多い一方で、次に述べる変形性関節症に移行していく方もいます。
②手指の変形性関節症(ヘバーデン結節・ブシャール結節・母指CM関節症)
指の第1関節にコブができ、腫れや痛み、変形が起こるのがヘバーデン結節です。日本整形外科学会によると、一般に40歳代以降の女性に多く、手をよく使う人に起こりやすい傾向があります。第2関節に同じ変化が起こるものをブシャール結節、親指の付け根に起こるものを母指CM関節症と呼びます。
原因はまだはっきり分かっていませんが、加齢、エストロゲンの減少、遺伝的な体質、指の使いすぎが重なって起こると考えられています。2024年に発表された日本の調査では、家族にヘバーデン結節やブシャール結節のある人がいる女性は、そうでない女性に比べて発症のリスクが大きく高いことが報告されています。
診断はX線写真で行います。関節のすき間が狭くなる、骨のとげ(骨棘)ができるといった所見があれば診断がつきます。関節リウマチとはまったく別の病気です。
③関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が続く病気です。指の第2関節や付け根、手首などの関節が腫れて痛み、朝のこわばりを伴うのが典型です。ただし、初期には腫れがはっきりせず痛みだけのことも多く、その場合は更年期の関節痛との区別が難しくなります。朝のこわばりは更年期の関節痛でも起こるため、こわばりの長さで見分けることも難しいのが実際です。「左右対称に腫れるのがリウマチ」と言われることがありますが、片側だけ、あるいは左右で違う関節に出るリウマチも多く、対称かどうかで見分けることはできません。放置すると関節の破壊が進みますが、現在は早く診断して治療を始めれば進行を抑えられる病気になりました。
診断は、腫れている関節の数、血液検査(リウマトイド因子・抗CCP抗体)、炎症反応(CRP・赤沈)、症状の持続期間(6週間以上か)を点数化する国際的な分類基準をもとに、診察所見と合わせて総合的に行います。
リウマチとの見分け方:まず「腫れているか」を見る
結論:見分ける最初のポイントは「関節が腫れているかどうか」です。更年期の関節痛で関節が腫れることは稀なので、腫れがあれば関節リウマチを疑って受診してください。痛みだけの場合は、自分で見分けるのは難しいことが多いと考えてください。最終的な判断には診察と検査が必要です。
ステップ1:関節が腫れているか
- 指の関節が腫れている(やわらかく、熱をもっていることが多い)→ 関節リウマチの可能性を考えます。3週間以上続くなら受診してください
- 第1関節の両脇に硬いコブがある → ヘバーデン結節(変形性関節症)の可能性が高くなります
ステップ2:痛みだけなら、どの関節か
- 第1関節(指先に近い関節)だけが痛い → 更年期の関節痛や、ヘバーデン結節の初期を考えます
- 第2関節・指の付け根・手首が痛い → 更年期の関節痛と関節リウマチのどちらもあり得ます。痛みだけで腫れのない関節リウマチも多く、この段階で自分で見分けるのは困難です。痛みが3週間以上続くなら受診してください
受診を急ぐ目安になる症状
- 微熱、だるさ、体重減少など全身の症状がある
- 家族に関節リウマチの人がいる
注意したいのは、血液検査だけでは白黒がつかないことです。関節リウマチの患者さんの中には、リウマトイド因子も抗CCP抗体も陰性の方が一定数います。逆に、リウマトイド因子は健康な方でも陽性になることがあります。「検査が陰性だったから大丈夫」「陽性だったからリウマチ」と決めつけず、関節の腫れ方や経過を専門医に診てもらうことが大切です。
何科を受診する?受診の目安
結論:まずは関節リウマチかどうかの見極めが最優先です。指の関節の腫れや朝のこわばりが続く場合は、リウマチ科(リウマチ専門医)への受診をおすすめします。
- リウマチ科・リウマチ専門医: 関節リウマチと、それ以外の関節痛(更年期の関節痛、変形性関節症)を見分けるための診察、血液検査、必要に応じてX線検査を行います。リウマチが否定された場合も、その先の対処法を一緒に考えます。
- 整形外科・手外科: ヘバーデン結節などの変形性関節症で、テーピングや装具、注射、手術など局所の治療が必要なときの窓口です。
- 婦人科: ほてり、発汗、不眠などほかの更年期症状が強い場合や、ホルモン補充療法を検討する場合に相談します。
次のような場合は、様子を見ずに受診してください。
- 関節の腫れが3週間以上続いている
- 腫れはなくても、第1関節以外(第2関節・付け根・手首)の痛みが3週間以上続いている
- 夜間や安静時にも痛む
- 発熱やだるさを伴う
関節リウマチは、発症から早い時期に治療を始めるほど関節を守れる病気です。「更年期のせいだろう」と数か月我慢してしまうことが、いちばん避けたいパターンです。
今日からできる対処法
結論:原因が更年期の関節痛や変形性関節症であれば、指への負担を減らし、温めて動かし、必要に応じて薬を使うことが基本です。
指の使い方を変える
- 重い鍋やバッグは指先でつまむのではなく、手のひら全体や腕で支える
- ふた開け、缶切り、雑巾絞りには補助具を使う
- スマートフォンの長時間の片手操作を減らす
- 痛む第1関節は、テーピングや市販の指用サポーターで軽く固定すると楽になることがあります(日本整形外科学会もテーピングを勧めています)
温める・動かす
血流がよくなると、こわばりは軽くなります。朝は洗面器のお湯やシャワーで手を温めてから、ゆっくりグー・パーを10回ほど繰り返してみてください。入浴中に指の関節をひとつずつ軽く曲げ伸ばしするのも有効です。強い痛みや熱感があるときは、無理に動かさず安静を優先します。
痛み止めの上手な使い方
痛みが強いときは、湿布や塗り薬などの外用薬から使うのが一般的です。市販薬を使う場合は薬剤師に相談し、3週間使っても腫れや痛みが引かないときは受診してください。飲み薬の鎮痛薬は胃や腎臓への負担があるため、続けて使う場合は医師の指示のもとで使いましょう。
ホルモン補充療法という選択肢
更年期症状が全体的に強い方では、婦人科で行うホルモン補充療法(HRT)が手指の症状にも役立つ可能性があります。2025年に発表された日本の研究では、手指の変形性関節症のある更年期前後の女性で、ホルモン補充療法を受けたグループは、漢方薬やサプリメントを使ったグループに比べて3か月後の痛みと手の機能の改善が大きかったと報告されています。ただしこの研究は治療を無作為に割り付けたものではなく、人数も少ないため、結果の解釈には慎重さが必要です。ホルモン補充療法には向き不向きがあるので、婦人科で相談してください。
食事とエクオール
大豆に含まれるイソフラボンは、腸内細菌の働きで「エクオール」という成分に変わります。エクオールはエストロゲンに似た構造をもつことから、更年期の女性の健康との関係が研究されています。ただし、イソフラボンからエクオールを作れる腸内細菌をもつ人は日本人女性の約半数といわれ、大豆をたくさん食べても作れない人がいます。
手指の関節との関係については、研究が進んでいる段階です。
- 2024年の日本の調査では、ヘバーデン結節・ブシャール結節のある女性は、ない女性に比べて尿中のエクオール濃度(体内でエクオールを作る力の目安)が低い傾向があり、特に50代で差が目立ったと報告されています。
- 2025年に発表された日本の予備的な臨床試験では、手指の変形性関節症のある45〜60歳の女性104人がエクオールを12週間摂取したところ、動作時の痛みの評価(VAS)と手の機能の評価(DASH)が開始前に比べて改善したと報告されています。ただし、この試験には偽薬(プラセボ)を使った比較対照がありません。
つまり、エクオールと手指の症状には関連を示す報告が集まりつつありますが、「変形が元に戻る」「病気が治る」という性質のものではありません。また、エクオールを含む食品やサプリメントは医薬品ではないため、痛みや腫れが続く場合は、まず受診して原因を確かめることが先です。大豆製品を日常的にとることは、食事の面からできる無理のない工夫のひとつです。
院長監修のサプリ「へバスター」について
当院の院長は、関節リウマチではないと診断された後も指の痛みに悩む女性が多いことから、アグリコン型イソフラボンと腸内環境を整える成分を組み合わせた栄養補助食品「へバスター(HEBER STAR)」を監修しました。日本リウマチ学会での研究発表の内容や、成分の考え方、選び方については、次の記事で詳しく解説しています。
→ ヘバーデン結節にサプリでできるセルフケアとは?リウマチ専門医が開発した成分と選び方
へバスターは医薬品ではなく、病気の診断や治療に代わるものではありません。関節の腫れや痛みが続く場合は、まず受診して原因を確かめてください。
よくある質問
Q. 更年期の指の関節痛は、いつまで続きますか?
A. 更年期に伴う関節痛は、閉経前後の数年で落ち着く方が多い一方、ヘバーデン結節などの変形性関節症に移行すると変形が残ることがあります。痛みが数か月続く、コブが大きくなってきたという場合は、一度受診して原因を確かめてください。
Q. 血液検査でリウマチが陰性なら、安心してよいですか?
A. 安心材料にはなりますが、それだけで否定はできません。リウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性の関節リウマチもあります。関節の腫れが続く場合は、経過を見ながら再評価することがあります。
Q. ヘバーデン結節は治りますか?
A. 一度できた変形を元に戻す治療は今のところありませんが、痛みは時間とともに落ち着くことが多く、テーピングや薬で症状を和らげることができます。痛みが強く生活に支障がある場合は、注射や手術という選択肢もあります。
Q. サプリメントで指の痛みは治りますか?
A. サプリメントは医薬品ではなく、病気を治すものではありません。エクオールについては手指の症状との関連を調べた研究が報告されていますが、偽薬と比べた大規模な試験はこれからです。まずは受診して原因を確かめたうえで、生活の工夫のひとつとして検討してください。
Q. 何科に行けばよいですか?
A. 指の関節の腫れや朝のこわばりが続くときは、まずリウマチ科で関節リウマチかどうかを確かめることをおすすめします。変形性関節症で局所の治療が必要なときは整形外科・手外科、ほかの更年期症状が強いときは婦人科が窓口になります。
まとめ
- 更年期に指の関節が痛くなる背景には、エストロゲンの減少による滑膜への影響がある
- 原因は主に3つ:更年期に伴う関節痛、ヘバーデン結節などの変形性関節症、関節リウマチ
- 見分ける最初のポイントは「腫れているか」。更年期の関節痛で腫れることは稀で、腫れがあればリウマチを疑う
- 痛みだけなら、第1関節だけの痛みは更年期の関節痛を考える。それ以外は自分で見分けるのが難しいので、3週間以上続けば受診
- 腫れや痛みが3週間以上続くなら、リウマチ科で早めに確認を
- 対処の基本は、指の負担を減らす、温めて動かす、必要に応じて薬を使うこと
- エクオールと手指の症状の関係は研究段階。過度な期待はせず、まず原因の確認を
参考(院長の学会発表・一次データ):「更年期関節痛に対するエクオールの効果」日本リウマチ学会 2020/「関節リウマチ除外後の関節痛に対するアグリコン型イソフラボン(へバスター)の効果の検討」日本リウマチ学会 2021
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札幌大通リウマチ内科は、地下鉄大通駅から徒歩1分のリウマチ専門クリニックです。「リウマチかどうか知りたい」「リウマチではないと言われたが痛みが続く」という方の相談を日常的にお受けしています。初診はネット予約からお申し込みいただけます。
監修:札幌大通リウマチ内科 院長 澤向範文(医学博士・日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医)
参考文献・出典
- 日本整形外科学会「ヘバーデン結節」(症状・病気をしらべる) https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/heberden_nodes.html
- 日本リウマチ財団 リウマチ情報センター「関節リウマチの診断」 https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/diagnose/
- 公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会「『メノポハンド』を知っていますか」 https://www.meno-sg.net/health/menopause/5947/
- Hirase Y, Okubo A. Equol production capability and family history as risk factors for hand osteoarthritis in menopausal and postmenopausal women. Cross-sectional study. Journal of Orthopaedic Science, 2024. doi:10.1016/j.jos.2024.02.001
- Shimoe T, et al. Effects of Equol on Hand Osteoarthritis in Perimenopausal Women: A Pilot Study. Cureus, 2025. doi:10.7759/cureus.88013
- Menopausal hormone therapy shows superior efficacy to complementary and alternative medicine in treating symptomatic hand osteoarthritis in Japanese women during perimenopause. Women’s Health (London), 2025.(PMC12317222)
